社長とは呼ばないで(裏M.A.P.)

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《1984年8月27日のノート》

 
書くよりもしゃべる方がめんどうだ。自分のきわどい内部について正確に語ろうとするには、僕はどうも疲れ過ぎている。というより、それは語るようなものではないのだ。あえて語れば汚くたれ流すことになる。語れる言葉は〈正当〉な言葉のみである。
だから、僕は〈正当〉な言葉だけを語ろうとする。といっても、その言葉の裏にも薄汚れた暗部がへばりついているのだが、しかしそれを気にしていては〈正当〉な事など何ひとつ始めることが出来ぬではないか。
「仲間たちへの誠意」、だからその言葉の裏を勘繰ってはならない。額面通り受け取っておけばよいのだ。そうでなければ出来ぬ事がたくさんある。そうしておいて、やらねばならぬ課題がたくさんある……

ところが結局課題は手付かずで、僕はもう六日間もだらしなく飲み続けている。この停滞した生暖かい空気の中から、なかなか抜け出すことができない。
〈簡単な僕の意志の問題なのに〉
そう思いつつこの妙な静寂が、萎えた僕を捕らえて離さない。
「仲間たちへの誠意」……
語った言葉が空中分解していく。
(1984/8/27)
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《1984年8月22日のノート》

 
単純な感情など、そう滅多にあるものではない。単純な言葉が歓迎されるとすれば、それは実生活に於て単に有効であるというに過ぎない。どうもややこしい僕の気持ちを表すために、僕自身の言葉の無力を感じながらも、僕はそれを放棄する事ができない。

無数の空気が衝突し、あるいは交錯し、結合と分裂を繰り返しながら、それぞれ複雑な形態を持つ大小の群れとなって渦を巻き、ある時は柔らかく、突如激しく、それらは僕の乾いた皮膚を様々な角度で愛撫する。久しく、僕はこの風を忘れていた。遠い街の喧噪、遥かな海上で軋む漁船、そうした空想はどんなにか僕を楽しませる筈だった。だが、テレビから流れて来る露骨な台風情報は、僕の叙情的な写実画を無惨に引き裂いてしまう。

「気に入った空想が伴わなければ、この風も余り僕を惹きつけない」

僕は揺れ動く風の中を歩き乍ら、そんな事を考えていたのだが、僕の肉体は、その表面から次第に内部へと、しかし内部とは無関係に、静かにこの風に影響され乍ら、安定した快楽で、侵蝕されていった。
(1984/8/22)
 

《1984年8月20日のノート》

 
ある直線上において、全くの同一点に立っているのに、生きるということがベクトルを必要とするのなら、そこでの矢印の向きによって、全く相反する立場があり得る、そんな当たり前すぎてつまらぬことを考えていたのだ。

↑…《読書量の減っていることが不満である》

↓…《暴飲暴食のために、また胃が痛み出した》

→…《昨日と一昨日のこと、彼のこと、彼女たちのこと、そして僕自身のこと、あるいは、つまり恵まれた人間たちのこと》

←…《床屋にだって行かなければならないんだ。だが今日は定休日》

→…《他にもいろいろあったはずなのだが……》
 
↑…《そうだ、ギターの弦を買ってこよう。ついでに、本屋にも寄ってみるのかい?》

→…《十七日に読んだ「マクシミリアン博士の微笑」から
「あの子供達の素朴なタマシイをつかむのは、きっと私達のもっと素朴なタマシイでなくてはいけないよ」
「あの子供達はせっかくカラの中に閉じこもれたのです。ようやくなんです」》
《こんな時にまぜっ返してややこしくして、一体何をしてるんだか、おまえは……》
《「あなたですよ。あなたが私達にウソをつくことを教えたのです。あなたの前では、誰でも平気でウソをつきます。あなたがやさしいせいではなくて、それはあなたが臆病なせいです」
子供「私、先生好きです。」 助手「もう行ってお休み。」
子供「私、先生がとても好きです。」 助手「いいよ。お休み。」
子供「先生、先生に触ってもいいですか?」
助手「先生はね、とてもくたびれた……。」
子供「先生、触ってもいい?」 助手「うん。ひどく、くたびれたんだよ……。」
「あなた方は本当にこの子のことを考えているんですか? 本当ですか? あなた方のおもちゃにするためにこの子をソッとしておきたいと言うのなら、私は許せませんよ」
「うわべだけのなぐさめあいだけで一生送れると思ったら大間違いよ」》

↓…《別役実の引用、というのが気に入らない》

→…《「あなたは愛されてたんじゃなくて、同情されていたのよ。しかも、それもあなたは知っていた。そうね……? あなたは知っていたわ。知っていながら、愛されているフリをしていた。だから、あなたは、だまされていたんじゃなくて、だましていたのよ。この人達も、つい今までは、あなたの事をだましおおせていると信じてたのよ」
「なかったんだよ。やっぱり、何事もなかったんだよ……」》

↑…《案の定だ……。電話でもしてみるかね》
いったいどうしたことだろう。あいつが電話に出ないということが、こんなに僕を不安にさせるのだ。外は土砂降り、この時間ではもう帰る電車は無い。
「酒は飲むな、しっかりと一人で生きていく」
露骨に自尊心が傷つけられるよりは、嫉妬心という低劣な概念にカモフラージュされている方がよほどいい。

←…《ごめんなさい。ひねくれた言い方、許してください。素直になりなさい……》
ああ、何というありきたりな風景なのだ。明日になれば僕はすっかり元通りになっちまうのだろうけれど、そうなる前に、今のこの風景の中で、この風景共々丸ごと受け入れなければならない、と僕は思っているらしいのだ。あなたがあなたでなかったら、僕はあなたと出会いはしなかった。

曖昧な関係が君を苦しめている。曖昧とは、ベクトルの方向が定まらず揺れていることだと思っていた。でもその間違いに気づいたのだ。

この地点で、僕は力と方向を失ってみる。
(1984/8/20)
 

《1984年8月18日のノート》

 
担々とした絶望の層の上には、余りに安易な、だからこそ懐かしい平安の層が重なり、掘り起こしてみたところで、それは時の経過を示す以外に何も語りはしない。僕はその地表を歩きながら、ひたすらに保障された嵐を待っている。それは豪奢な気分だ。感傷などない。水分は瞬時に気化してゆく。〈満たされている〉という事が、残された広大な世界を顧みないことなら、深遠な高揚などもはや訪れることはない。

僕はいつしか立ち止まり、そして再び歩き出す事を放棄するだろう。その時、なお僕に僅かでも硬直に対する敵意があれば、後は地熱を足裏に捉え、いまだ名を持たぬ地層の怠惰を糾弾するのみだ。

「しかし、損害はただ僕だけにはとどまらない。」
それこそ怠惰を隠す偽善だと君は言うのか。そうではない。純粋な無償の行為が不可能なのと同様に、全くの偽善も有り得ないのだし、何よりも〈愛〉は分析される事を拒みながら確かに存在しているのだ。

だが、遠く離れている事に、ある安堵感を覚えている。
(1984/8/18)
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