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社長とは呼ばないで(裏M.A.P.)

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何を話していたのだろう

 
深夜2時間の電話。何を語っても、すべては詮無いことなのに。

あなたは、自らの意識が薄れるような薬の投与を一切拒否している。どうやらあなたは、いまだ生き続けることができると信じているらしい。だが、内臓の機能など、今のあなたの生体に関する全てのデータは、生きていることが不思議という数値を示しています。今まで長く終末医療に携わってきた医師の経験から判断すれば、あなたの命は、あと数日、長くても一週間なのです。
きっと、間もなくあなたの元に、「生きることに対する言い知れぬ不快」が訪れることでしょう。
この末期の不快感に襲われた者は、どれほど強い意志の持ち主でも、そのあまりに耐え難き絶望の故に、殺してくれと懇願するようになるのです。その苦しみから逃れて死ぬ道は唯ひとつです。不快を認識するのは頭脳、その脳の働きを低下させる薬を、今すぐに、痛み止めの麻薬に混ぜて点滴する方法しかありません。
但し、この薬の人体に及ぼす影響には個人差があって、投与した瞬間に昏睡状態となることもあり得ます。そうなれば、愛する奥さまの声に、もう二度と答えることはできないでしょう。
確かに、今のあなたは、奥さまと至極普通に会話をしている。そんなあなたに、今のあなた自身の置かれた状況を理解しろというのは無理なことかもしれません。しかし、それでもあなたは、今すぐにも決断をしなければならないのです。なぜなら、あなたの全身に転移している癌細胞は、間もなくあなたの血管を圧迫し、あなたの肉体は、点滴の針からの液体の注入を、一切受けつけなくなることでしょう。そうなってしまえば、間近に迫る想像を絶する苦しみから逃れる道を、あなたは失うことになるのです。そしてあなたの奥さまは、もがき苦しみ、「殺してくれ」と叫びながら死んでゆくあなたを目の当たりにするでしょう。つまり、あなたが安らかな死を迎えるということは、あなた自身のためだけではないのです。
さあ、徐々に死なせてくれる薬の投与を受け入れるのかどうか、その判断を奥さまにさせないためにも、今この時、あなた自身がその決断をすることが、夫としての最期のやるべき仕事なのではないでしょうか……

深夜の、2時間の電話。何度も何度も、堂々巡りの繰り返し。

僕は、あの時に嘘を語り、そして今また、嘘を書いている。
残された者は、自ら構築した嘘を頼りに、生き続けるしかないのである。
半年という、長いインターバルの後に。
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