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社長とは呼ばないで(裏M.A.P.)

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《1995年2月3日のノート》

 
昨日の節分のこと。

手にはめたピンクのビニール手袋は食器洗いの時に使うもの、毛糸で編まれた茶色のショールを身にまとい、トイレットペーパーの芯で作った角一本と赤鬼のお面を貼りつけた紙袋、目のところに穴を開け、そいつを被れば準備完了。幼い子供たちと従兄弟ふたり、楽しい豆まきの真っ最中、そこへ向かっていざ出陣。突然の鬼の出現に、甥っ子はべそかいて近くの母親にすがりつく。ナチルはいとこの女の子の手を引っ張って、ばあちゃんの部屋へと一目散、しかし畳の隅が行き止まり、行き場が無くてへたり込み、ふたりは寄り添いあって泣き出した。強がっていた一番年上のモリだったが、ちょいとにらんでやったら情けない、豆、放っぽり出して逃げ出した。
「こんなもんでいいだろう?」
「はい、ごくろうさん」
狭い書庫の中で、子供たちに見つからぬように、かあちゃん手作りの衣装を脱ぐ。
「おいみんな、もうオニはいないぞ、だいじょうぶだぞ」と、モリのいたって真剣な声。どうやら鬼の正体が、父親であったなどとはこれっぽっちも思っちゃいないらしく、鬼の出現を、全く疑ってはいないらしい。
「ナチル、もうオニいないよ、にげちゃったよ、だからもうだいじょうぶだよ、だからもうでておいで」
頼もしい兄の言葉に、こっくり頷いて出てきたナチル、そのままトコトコとかあちゃんのところへ歩み寄り……
「かあちゃん、とうちゃんのオニ、こわかったね」

誰がペテン師?
(1995/2/3)
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